副作用に騙されないために

はじめに

これは、僕の経験談を元に、多くのがん患者さんの脳裏に残して置いて欲しいな。と言う思いで書いています。
注意喚起の様な大げさな物ではありませんが、ついつい忘れがち、ついつい頼りがち、ついつい信じがちになってしまうのでは無いかな?と感じだので、敢えて書くことにしました。

ベクティビックス, アービタックスと言う薬剤

僕は、現在ベクティビックス(パニツムマブ, →Wikipedia)と言う薬品を中心とした 化学療法 を受けています。ベクティビックスにとても良く似ている薬品に、アービタックス(セツキシマブ, →Wikipedia)と言う薬品があります。両者とも、EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor: 上皮細胞増殖因子受容体)に働くタイプの薬品です。EGFRは細胞増殖に関わっています。
一般に、正常細胞に比べ、がん細胞にはEGFRが多く含まれています。ベクティビックスやアービタックスは、そのEGFRに結びつき、細胞増殖を抑え込むことで、がん細胞増殖を防ぐことを狙った薬品です。

EGFRは、多くの正常細胞にも含まれていますが、特に皮膚や肺, 消化器などに多く含まれているため、皮膚や肺, 消化器を中心に、正常細胞へ影響を与える 副作用 がでることで知られています。
ベクティビックス, アービタックスとも、特に皮膚への 副作用 が強くでるため、皮膚への 副作用 が強く出れば、出るほど、がん細胞の増殖も阻害していることの証拠になる、と言われています。

ベクティビックスとアービタックスの違いは、ベクティビックスが2週間に1回の点滴治療が必要。アービタックスは、1週間に1回の点滴治療が必要と言う違いです。(細かいことを言えば、ベクティビックスはIgG2抗体であり、アービタックスはIgG1抗体と言う違いがあります。)
アービタックスの方が、治療間隔が短い分、副作用 が穏やかと言う特徴があります。
ベクティビックスの治療を受けていても、適当なタイミングでアービタックスに変更することが可能です。またベクティビックスへ戻すことも出来ます。患者の都合で、いつでも切り替える事ができます。(体質によって、どちらかが利用できない場合もあります。詳しくは、腫瘍内科医に確認してください。)

その他の副作用

ベクティビックス, アービタックスは、他の 化学療法 の薬剤と比較して、皮膚症状が強くでると言うことを紹介しましたが、他の一般的な 化学療法 の薬剤と同様に、骨髄抑制こつずいよくせい などに 副作用 もでることを忘れてはいけません。

また、化学療法 では、一種類の薬剤だけを投与するよりも、他のタイプの薬剤を併用することで、治療成績が良くなる事も知られているため、他の薬剤の 副作用 も無視することはできません。

患者としては、極々自然なことで、常に頭の隅っこに残っている様な知識である様な気がています。当然、医療従事者も同様だと思うのですが。。。

医療従事者の思い込み

僕は、大腸がん(直腸がん)に 罹患りかん しています。肝臓や骨に 転移 しましたし、肺への 転移 も疑われています。

僕が受診している病院は、総合病院やがん専門病院の様な大規模な病院ではなく、消化器科の専門病院です。消化器の中でも胃腸を中心に診察しています。科目を特化しているだけに、近隣の病院の中では治療レベルが高いことで知られています。

腫瘍内科の専門医も常駐しているため、消化器系がん由来の転移がんも含め、化学療法 のサポート全般を行っています。支持療法 にも積極的で、副作用 を未然に防ぐ様な薬剤の使用や、運動などの補助的な方法論も積極的に取り入れる傾向があります。
一般外来や、病棟勤務など大勢の看護師さんが勤務されていますが、この腫瘍内科医の元で勤務している看護師は、基本的メンバーが決まっていて、化学療法 のサポートを行っています。
薬剤師も複数勤務していますが、特に 化学療法 を中心に扱っている薬剤師も決まっていて、薬剤に対する疑問も、その薬剤師に聞けば、一通りのことが分かる。と言う体制になっています。

この専門性が、時に仇となる事がある。そんな事が発生しました。

副作用の発症機序はひとつとは限らない

ベクティビックス, アービタックスは皮膚症状を起こす 副作用 が強くでると言う話をしました。

現在、僕は口角炎こうかくえんに悩まされています。口角炎も、ベクティビックス, アービタックスの利用者に良く見られる症状です。そのため、看護師も薬剤師も、化学療法 由来の症状である可能性が高い。と言う判断を下しました。

化学療法 を行う前から、頻繁に口角炎を起こしているなどの体質があるなら、他の可能性も頭に入れるのが当然なのでしょうが、そういう体質で無い場合、ベクティビックス, アービタックスの特性を考えれば抗がん剤由来である可能性を真っ先に考えることも分からなくありません。

しかし、化学療法副作用 にも様々あって、骨髄抑制 などの 副作用 の可能性を無視する事はできません。
皮膚症状が強くでる薬剤であって、しかも、利用者の多くに出やすい、口角炎と言う症状である。と言うことが、当たり前過ぎることを見落としてしまう。そんな場合もあるでしょう。

口角炎と言う病気

化学療法 を無視すると、一般的には真菌しんきん(主にカンディダ)などが原因になる場合が多いことで知られています。また、ステロイド の乱用も、口角炎を悪化させる原因になります。

化学療法由来の口角炎の場合には、ステロイド で対処する事が定石だそうです。でも、一般的な口角炎に ステロイド は使用してはダメな薬の代表格で、一般的には抗真菌薬を使用します。

腫瘍内科医からは、複数のステロイド塗布薬が処方されていましたが、消化器科の専門病院なため、抗真菌薬を処方しようと言う発想は無いようです。
その一方で、一般的な皮膚科を受診すると、多くの場合には抗真菌薬が処方されます。
総合病院の様な病院でも、意図的に皮膚科を受診しないと、恐らく抗真菌薬が処方されることは無いでしょう。
ここで、専門性の壁が出てきてしまいます。

実際の治療

僕の現在の症状は、皮膚症状が中心。吐き気はほぼ無し。やや疲れやすいな・・・とは感じていますが。
なんとなく、この口角炎が、化学療法副作用 とは思えない・・・ と言う思いがあり、ステロイド の使用に強い抵抗感がありました。

下手に、一般的な病気や、薬剤の組み合わせの知識があったためなのか?腫瘍内科医や看護師, 薬剤師の言葉に疑いを持ってしまいました(笑)

そこで、皮膚科を受診することにしました。この皮膚科は、今年の8月に受診していて、がんに罹患していること、どの様な治療を行っていることなどは、説明済みの病院です。

口角炎ができたこと。ベクティビックスの治療を行っていて、副作用 として皮膚症状がでやすいこと。ステロイド塗布剤処方されているが、口角炎に ステロイド を塗布することに違和感を感じていること。
など、現在感じている疑問点を説明。皮膚科医から、取り敢えず抗真菌薬を試して、ダメだった ステロイド を試した方が安全性が高いことの説明を受け、抗真菌薬を処方してもらうことにしました。

ついでに、ベクティビックスが爪囲炎そういえんを起こしやすく、もし爪囲炎が発生した場合に、対処してもらえるか?と言うことを確認して帰ってきました。(結果的には、外科的処置が必要では無い症状なら、対応できると思う。と言う事でした。外科的処置が必要な場合には、要相談。と言われました。)

処方してもらった薬は、アズノール軟膏なんこう口内炎こうないえんに対処薬としても知られているアズノールですね。食事の前後に塗布。口内炎にも使えるので、当然、口の中に入っても大丈夫な薬です。
これを塗布して、2日目に見るからに口角炎の炎症が収まってきました。完治までにはもう少し掛かりそうですが、僕が感じた違和感通り、化学療法由来の症状ではなく、どの様な菌が影響していたのか、までは分かりませんが、一般的な口角炎でした。

普段は暴れることの無い様な常在菌が、骨髄抑制 の影響で炎症を起こしてしまった。恐らく、こんな理由で生じた症状だったのでは無いかと思います。
これも、化学療法由来の 副作用 だったのだろう、とは思えますが、ベクティビックス, アービタックス特有の皮膚症状では無かった。と言うことです。

あの時、素直に ステロイド を塗布していたら、さらなる痛みに襲われていた事でしょう。おぉコワっ。

骨髄抑制 が起こっているのであれば、疲れも説明は付きます。
僕が感じていた、違和感は正しかった。と言う結論でした。

最終的には、自己判断が必要

腫瘍内科医は、化学療法 の専門家なので、基本的にはその言葉は素直に信じて良いと思っています。看護師さんや薬剤師さんなどの医療従事者もそれに準じます。

しかし、自分の身体に起こっている事は自分にしか分かりません。ですから、最終判断を下すのは常に患者本人です。
たまたま僕には、口角炎など比較的一般的な病気に対して、『家庭の医学』レベルの知識があったので、「口角炎に ステロイド ?」, 「この疲れの原因は 骨髄抑制 じゃない?」と疑うことができました。
この様な知識がなくても、「なんか、病院の説明と、自分の症状って食い違っているんだよな・・・」位の違和感を感じる程度の知識と経験があり、それを自分の力だけで、当たりをつけて、専門家の意見を聞いて見る。の様な行動を取る事ができないと、自分の身体を守る事ができない。なんて場合もあります。

なかなか、難しい事だとは思いますが。

しかし。医療従事者からの説明を十分注意深く聞いて、自分の状態に当てはめていて、説明に合致しているのか?違和感は残らないのか?は、感じ取る事ができるかも知れません。
それができるのは、患者さん本人しかあり得ないので、単純に信じ込んでしまう事は、避けた方が無難である。と言う事は分かってきます。

がん はとても難しい病気なので、一般人がいくら勉強したところで、医療従事者が話す全てを完全に理解することは、とても難しいと思います。
それでも、僅かでも基礎医学の知識がある人と、そうでも無い人では、医療従事者の言葉の理解度は違う様に思えます。

今回の出来事を通しても、改めて患者自身も、基礎医学の入り口位だけでも理解し、疑って見られる様な知識が必要なんだな。と感じました。

最終的に、自分の身体を守ってくれるのは、自分しか無いな。ってのが、今回の体験の、結論なのかな。

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