すべてのがん患者は運動を治療として行うべき 運動が乳がん患者のQOLを改善 欧州臨床腫瘍学会

すべてのがん患者は、運動の習慣化をがん治療の一部として行うべきだと、がん治療の専門医らは主張している。これらの研究は、2018年10月にドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の年次学術集会で発表された。

運動がん患者の症状管理や生活の質(QOL)を改善

フランスで行われている研究で、がん治療の一環としてスポーツを行うことで、治療中および治療後の症状管理や、QOL が向上し、健康状態も大幅に改善することが分かった。

パリを中心とした80箇所以上のがんセンターで、毎年3500人あまりのがん患者が集い、運動プログラムに参加している。参加費用は、約5万円と決して安価では無いものの、参加人数は毎年増えつつある。

運動クラスは、がん とその治療について、専門的な知識を持つトレーナーで、個々の患者のニーズに併せた運動プログラムを提供している。

化学療法 あるいは 放射線治療 を行う6ヶ月間に、少なくとも週2~3回1時間の運動を行う。運動プログラム終了後も、生活の中に運動が組み込まれる様に指導がなされる。
この様にすると、がん患者は大きな利益を受ける事が分かったと言う。

20年の経験でわかった事は、情報や運動プログラを提供するとき、医療機関などで行った方が、患者は手軽で安全に感じやすいと言うことと言う。
病院を離れた、がん治療についての専門知識を持たない運動クラスで運動を受けても、これだけの利益をうける事は難しいと言う。

運動により乳がんの疼痛と疲労のスコアを83%減少

がん治療を受けている患者を対象に、筋力トレーニング, 有酸素運動を1回60分、週2回を、3ヶ月及び6ヶ月続けた後の、疼痛と疲労のスコアが、乳がんでは83%, 転移性がんでは21%、それぞれ有意に減少した。
6ヶ月後には、全体の60%ほどの参加者の、疲労スコアが3.1から2.1に。疼痛スコアが、3から1.9に低下した。

体重から、脂肪分を除いた除脂肪体重じょしぼうたいじゅうは安定したままで、脂肪量が、34.3%から3ヶ月後には32.4%に減少した。

6ヶ月のデータがある患者では、脂肪量が34.3%から6ヶ月後に32.4%に減少した。除脂肪体重は、42.8Kgと変わらなかった。

除脂肪体重 = 体重 – (体重 × 脂肪率 × 0.01)

多くの患者は、がんと診断される前に、筋肉を失い疲労することが多いので、最初の診察後、可能な限り早い時期に運動を行うことが必要で、初期症状においては、運動も応急処置とみなすべきだ。と結論づけています。治療が進んでからは、副作用を緩和する効果も期待できるらしい。

運動が乳がん患者のQOLを改善 リスクの高い患者でも効果

治療中の QOL が低下する危険性の高い患者であっても、運動には効果があり、支援を追加する必要もあることが分かった。

1週間に、150分の中強度の運動または、75分の高強度の運動を続けた乳がん患者は、運動をしなかった患者に比べて、6ヶ月後, 12ヶ月後の QOL が有意に改善することが分かった。
運動を取り入れた患者は、身体的幸福度が大きく改善し、疲労、痛み、息切れなども少なくなった。

運動をした患者の、約60%で 化学療法 の前後で身体的に良好を保つことができた。化学療法 治療中には低下する物の、運動をしない患者に比べ、身体的, 感情的, 使用上のスコアは、一貫して良かった。

移転性乳がんについての大規模なコホート研究も

この様な研究結果より、運動療法 を、標準治療 の一部として行うべきだと結論づけている。

現在、欧州20カ国が参加し、転移性乳がんについて大規模な研究が行われている。運動の効果についても、調査される予定だ。

運動プログラムを取り入れる事で、化学療法, 放射線治療 の治療方針についても、患者自身が積極的になる様になり、治療結果を改善する可能性が高まる。運動療法は、がん患者の予後を改善し、医療費を減らすことにも役立つことを実証する必要がある。と言う指摘もある。

運動プログラムに参加する患者は、すでに活発に体を動かすことを習慣としている人が多い傾向がある。それ以外のふだんは活発ではない患者や、低所得などの理由で不健康な生活スタイルをもつ患者なども、化学療法 を受ける期間中に運動による、ベネフィットを受けられる様に
支援する必要がある。
がん治療に運動わ含めるメリットを明らかにするために、さらに多くの研究が必要である。と結論付けられている。

日本でも定着できるのか

ヨーロッパを中心に、運動療法がん 治療の一貫として、高い関心が集められている。標準治療 の1つとして、他の治療法と共に 集学的治療 を行うべきである。と言う議論も良く耳にする。十分に確立された物では無いのかも知れないが、日本でも外科手術の後、体調の安定が確認された段階で、積極的に運動を行うことは良い事である。と言う風潮が高まっている。回復の過程において、運動が良い方向に働いていることは、既に日本でも分かっている事なのだろう。

ごく一部であるのかも知れないが、日本でも積極的なリハビリが組み込まれている病院もあると聞いた事があるが、残念ながらヨーロッパの様に、標準治療 の一貫としてなどの強い口調での評価はあまり耳にしない印象がある。それだけ、日本の医療では運動プログラムに取り組み様な考えに至っていないのかも知れない。

記事にもある様に、身体を動かすことに成れているかどうかも大きなポイントではあるとは思う物の、運動プログラムと言う物の効果について、国民的関心として十分に浸透しているのか、どうかはとても大きいと思う。
当然のように、がん治療の知識をもった人の指導であるか、そうでは無いかもとても大切であるし、積極性に掛ける国民性として、自ら能動的に運動プログラムへ参加する傾向にあるのかも大きな問題となりそうだ。

そう云う意味でも、フランスの様に、病院手動での運動プログラム参加へのアプローチが大切だとは思うが、病院の規模や運動を行う具体的な場所の準備など、難しい問題はいろいろとありそうな気がする。

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