がん患者は温泉に入るな?

温泉療法の目的は

温泉療法 をはじめとする 温熱療法 の目的はどこにあるのか? 代替治療 と呼べるような、一定の体系を持った医療行為と言えるのか? 明確な根拠に欠ける様な、民間療法 なのか?多くの意見を見ることができる。
化学療法 の効果を上げることができる。という報告もあり、一部の病院では 保険診療 として 温熱療法 が認められていることからも、ある一定の効果が期待できる事は確かなのかもしれない。

禁忌症とされていた温泉

温泉に行くと、「一般的禁忌きんき症」と言う表示がある事に気づく。

禁忌症とは、温泉に入ることによって身体に悪い影響を来す可能性がある病気をさす。具体的には、「温泉の一般的禁忌症」「泉質別禁忌症」「含有成分別禁忌症」の3つに分けられる。

温泉に入らない方が良い病気というのがあって、泉質やその成分によって影響がある。と言う事だ。
まぁ確かに、泉質やその成分によって病状に影響してしまう病気があるよ。と言われれば、なんとなく「あぁ~そうなのか。」とも思える。

「一般的禁忌症」とは、温泉に含まれる「泉質」や「含有成分」に関係なく、すべての温泉に共通する禁忌症という意味だ。

成分とは無関係に、そもそも温泉に入らない方が良い。と言う病気が存在するのだ。と言う事のようである。
ここまで来ると、身体を温める事自体悪い事だ。と言われている様な気分にもなってくる。

有名湯治場でも

温泉協会から指示されているのか、都道府県の認可に必須なのかどうかはわからないが、「湯治」を売りにするほぼすべての温泉で、一般的禁忌症として「悪性腫瘍」、つまり「がん」を挙げている。

たとえば、「急性疾患(特に熱のある場合)、活動性結核、悪性腫瘍、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性の疾患、高度の貧血、そのほか一般に病勢進行中の疾患」といった注意書きがある。

この説明を素直に受け止めると、がん患者は温泉に入ってはいけない。と言う様にも読めてしまう。

このコラムを書いた著者は、現役の医師である。そして、

がん患者は温泉に入ってはいけないのだろうか。医学的根拠のない、そして現実離れしたこの記載は、いったいなぜ行われるのか。秋田県の玉川温泉のように「がん患者さんの湯治」を売りにする温泉があるにもかかわらずだ。

と続く。

「禁忌症及び入浴又は飲用上の注意事項」が32年ぶりに改訂

2014年12月発行の「日本医事新報」(4728号)に掲載された、国際医療福祉大リハビリテーション学の前田眞治教授の記事では、温泉における「一般的禁忌症」の「根拠なき根拠」を明白にしており、一読して思わずため息と苦笑いが漏れた。

つまり複数の医師が、温泉における「一般的禁忌きんき症」に疑問をていしている。という事になる。

「温泉地へ行くまで体がもたなく、却って命を縮めることになる」とは、交通機関や医療の未発達な時代の遺物に違いない。

既定の当時では、交通機関が未発達であり、医学も今ほど進歩していなかったから、致し方がない面もあるが、時代錯誤が生じていた。ということになる。
現在では、次のように改定されている。

「病気の活動期(特に熱のあるとき)、活動性の結核、進行した悪性腫瘍又は高度の貧血など身体衰弱の著しい場合、少し動くと息苦しくなる重い心臓又は肺の病気、むくみのあるような重い腎臓の病気、消化管出血、目に見える出血があるとき、慢性の病気の急性増悪期」

この様に時代錯誤が解消され、誤解が解消されたのであるが。

しかし、それから3年近くを経た現時点でも、この新通知がすべての現場(温泉)に行き届いているようには思えない。

温泉施設が対応してくれないと、一般市民の不安は取り除かれる事はない。
著者は次の様に苦言をていしている。

温泉地での旧態依然とした表示を目にするたびに、筆者はため息をついている。日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代だ。がん患者が温泉に来なくなったら、温泉を廃業せざるを得ないのではないか。

もっともな話だと思う。

がん治療に「温熱療法」が効く可能性は?

ひとつの事例として、著者自身が体験した経緯を述べています。

ちなみに以前、筆者は乳がんにおける「熱ショックタンパク(HSP)70」の発現を検討したことがある。その結果、悪性度の高い乳がんには、しばしば「HSP70」の発現がないことが判明した。

HSPは、熱に対する細胞の抵抗性の元となる。つまり「悪性度の高いがんは熱に弱い!」というわけだ。だから、「温熱療法」が有効である可能性が高い。

全ての条件で同様な結果が得られるかは不明ですが、少なくても一定の環境下においては 温熱療法 は有効である可能性が高いということを示す結果と言って良いだろう。

たとえ45度以上の熱い温泉に入っても、体内の温度はそう簡単に37度を超えることはない。それでも、少なくとも温泉は「がん細胞が喜ぶ条件」でないことだけは確かだ。効くと信じて温泉に入る。そう前向きに捉えよう。

前向きに捉える。という事はとても重要なキーワードのように思える。しばしば、がんと言う病気は身体的な改善だけでは説明が付かない、心理的なメカニズムによる変化が示させることがある。そう言う意味で『前向きに』はとても重要な事のように思える。
一般的な病気であっても、患者本人が『治そう』という強い意志を持つことで良い結果が得られることは分かっている。これは理屈ではなく、そう言う物なのだろう。
がんに関しても、『前向き』になることで『治す』と言う強い気持ちが働く事は言えるだろうし、それが身体にとってはプラスに働く可能性は高い。

ひとつの切っ掛けとして

温熱療法 が一定の可能性を秘めていることは確かな様だ。

少なくとも温泉は「がん細胞が喜ぶ条件」でないことだけは確かだ。

の言葉は大きな意味を持っているといえる。

がん治療では、しはしば精神的な部分が少なからず影響を与えている事は知られているし、精神科の医師ががん患者を支えるチームに加わって治療を行う チーム医療 の存在も知られている。
身体を温めてリラックス効果を得るという意味でも QOL を向上させる効果がある事は確かだ。温熱療法 がきっかけに前向きになることができたら、免疫系を活性化させることも期待できる。
これは、なにも 温熱療法 に限った話しでは無いのだが、少なくても QOL を向上させ、がん細胞が喜ばない条件を少しでも作れるのだとしたら、意味はあるのかもしれない。

一方で、温熱療法 の効果を得るためには一定の費用も必要になる。湯治とうじ にでかけるのには、ある程度纏まった資金も必要になる。それが精神的な圧迫になってしまっては、元もこうもない。
温熱療法 の効果を十分にえる事ができないとしても、自宅でゆっくりと入浴するだけでも、QOL 向上は期待できるし、がん細胞が嫌う環境を作り出す事にも寄与きよする可能性だってある。このあたりの精神的なバランスを取ることも、とても大切な事のように思える。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする