がんで不幸にならない方法 #1

1000人以上にがんを告知した医師が語る「がんで不幸にならない方法」

文春デジタルに掲載されていた記事です。1000人以上の がん 患者に 告知 をして来た、がん の専門医である森山紀之医師によるインタビュー記事です。全3回の1回目です。

がんと告知されたら「魔の2週間」のことを思い出してください

自分ががんと言われて落ち込まない方はいません。たとえ治癒率の高い早期であっても、絶望して寝込んだり、家族にあたり散らしたり、事実から目を背けたり、うつ状態になりかけたりする方も大勢います。でも、このひどい状態は、だいたい2週間で落ち着きます。告知を受けた直後の大混乱を経て、頭を整理し、なんとか受け入れることができるようになる。この精神的な落ち込みの期間を、私は「魔の2週間」と呼んでいます。

森山先生は、『魔の2週間』と言う言葉の提唱者でもあります。僕が愛読している本の中でも、『魔の2週間』が患者にもたらす精神的な苦痛と、どの様に過ごして行くべきなのかが語られている物が多数あります。

個人的には、この期間をどの様に乗り切る事がでるのか、家族や周囲に居る人が、どの様に関わり合ってくれるのかで、今後の闘病に大きな影響を与える事になるな。と言う感覚を持っています。

「完治」よりも大事なこと

がん の難しいところの1つが、完治 を目指す病気では無い。と言うところにあるような気がしています。早期がん の人はまだしも、進行がん と診断された人は、完治 を目指すよりも 寛解 の状態を長く続ける事に目を向けた方が良いと思っています。
そのあたりの話しが展開します。

私は「完治」よりも「がんと共に生きる」という気持ちが大事だと思っています。だから、まずはがんであることをしっかり受け入れることがすべての始まりだとお伝えしています。たとえば、完治の可能性が高い早期がんの場合でも、治すためには手術や抗がん剤や放射線などの治療が必要です。治療は長期間にわたることもありますし、転移が広範囲に広がっている場合はなおさら、「がんを克服しよう」というよりも、「がんと共に生きよう」というところへ気持ちを持っていくことが大事だと思っています。

がん の治療は、本当に長期勝負です。数週間~数ヶ月と言う単位では無く、数年, 数十年と言う単位で考える必要があります。そう考えると、「がんと共に生きよう」は実に合理的な発想である事がわかります。

「手術の成功率は75%」と言われたときは

責任問題うんぬんから、少し離れても、治療に100%の成功率なんて存在しないことは容易に想像ができます。同じ病状であっても、その人が持っている背景(血圧が高い、アルコールにより麻酔の効きが悪いなどなど)は全く違います。その全てに置いて『必ず成功する。』は寧ろ胡散臭うさんくささも感じます。
現実的に考えると、75%はかなり高い値なのでは無いか?と考える事ができる様に思えます。

そうです。「これからどうなってしまうのか」と考えると、おそらく、際限なく悪いことばかり考えてしまうことになります。がんは深刻な病気ではありますが、すべてのがんが不治の病というわけではありません。「これから何をすべきか」に目を向けることで、先々のことを不当に恐れずに、がんと共に生きる人生を受け入れることができると思います。

がん は治療が難しい病ではありますが、不治の病ではありません。良く理解し、医師の意見を基に自分にとって最適な方法論を見つけ出して治療を進める事が大切です。
冷静になり、がんと共に生きていく事を考える事が大切です。

今、インターネットやメディアなどでたくさんの情報が入手できますが、それらは必ずしも正しい情報とは限りません。まずは、がんについて正しい情報を事前に持っておくことを、私はおすすめしています。がんについて間違った情報を持つことが一番恐ろしいことです。人は、間違った情報により、間違った判断をしてしまうからです。

情報を得て、自分なりに理解する姿勢はとても大切です。病気は医療者の手によって回復する物ではなく、医療者のサポートを受けて患者本人が回復へ向かう物なので、情報量は多い方が良いのは間違えありません。
ただ、世の中の全ての情報が正しいとは限りません。twitter を読んでいても、それは良く感じます。

たとえば、膀胱がんで亡くなった私の知り合いは、「人工膀胱になるのが嫌だ」と最後まで手術を拒否して亡くなりました。人工膀胱や人工肛門の性能が今すごく進んでいて、その方が思っているような「最悪の」生活にはならない、という正しい情報よりも、「人工膀胱でQOLが低下した」という不確かな情報を信じてしまったのでしょう。

判断基準は、患者さんそれぞれにあるので、否定する事は間違っていますが、不確かな情報に惑わされてしまうのであれば、より科学的根拠のある説明を優先した方が良いと思います。

また、私たち医者は「100%確実」という言い方はできませんから、「手術の成功率は75%」というような説明をします。そうすると「4人に1人が死ぬってことですか?」とパニックになったり、「100%治ると評判の食材がある」と民間療法に頼ったりしてしまうケースも残念ながら少なくありません。

『成功率』と言う言葉の持つ意味は、きつと医療人の考える物と、一般人が考える物とでは違いがある様な気がしています。一般人は極端な判断をしがちです。医療人はそれを理解した上で丁寧な説明を行う必要があると思っています。
医療者の立場で、『100%』と言う事はできない事は誰にでも分かります。むしろ、過大な言い回しの方が怖さを感じます。

まずは、情報の根拠が示されているかどうかを確認してください。がんに限らず治療は科学的根拠があることが大前提です。根拠が明示されていない情報は、信じてはいけません。それから、「絶対」「100%」「奇跡の」など、あまりにも強い表現が使われている情報も、疑ってかかるべきです。私が長年勤務してきた国立がん研究センターの「がん情報サービス」は、信頼性が高いサイトですから、ぜひとも活用していただきたいと思います。

一般人が陥りやすいワナとも言えます。わらにもすがる様な思いが判断力を鈍らせるのでしょう。冷静な状態であれば、知識の浅い一般人でもあやぶんでしまう様な情報が満ち溢れている事は容易に理解できます。

僕が最近提唱している事は、

  1. がん の専門書は読まない。
    中には、ある程度知識がある人でも、唸る様な良書がありますが、多くの書籍は、やや怪しげな治療法を提唱する物が多い印象です。
    僕の手元にも、数多くの書籍がありますが、『絶対に紹介できないな。』と思う様な本ばかりで、良書は極々一部に過ぎません。
  2. 基礎医学書を参考にする。
    基本的には、専門的な知識に関しては医療者には敵いませんから、医療者が話している言葉の意味を正しく理解する事に意識を持ったほうが、より患者にとってはメリットがあります。また、体調を、より正確に伝える事も患者にとっては大きなメリットになります。
    それを行うためには、基礎医学の知識を身につける事が最適だと気づきました。『急がば回れ。』ではありませんが、1つでも多くの情報を、正しく医療者に伝える事が、結果自分の身を守る事に繋がる。と言う単純な発想にやっと気づきました。
  3. 様々な情報は、基礎医学の知識を基準に考える。
    ネット上にある、様々な情報の信用性は、自分が身につけた基礎医学の知識で判断することが一番正しい様です。情報源が、医師であっても、その情報が必ず正しいと言う保証はありません。
    それを最終的に判断するのは、患者本人です。判断がつかない物は、『あぁ~そういう話しもあったよね。』程度で良いのだと思います。

がんで不幸にならない方法 #1
がんで不幸にならない方法 #2
がんで不幸にならない方法 #3

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